「退職したいけど、お金がかかるから踏み出せない」そんな不安を抱えていませんか?
実は退職後には生活費以外にも健康保険料や住民税など、月25~30万円程度の支出が発生します。
しかし、事前に必要な金額を把握し、使える制度を知っていれば、経済的な不安は大幅に軽減可能です。
本記事では1級ファイナンシャル・プランニング技能士が、
- 退職でかかる5つの支出と具体的な金額
- 自己都合退職でも受け取れる給付金
- HSPの方が安心して退職準備を進める方法
まで詳しく解説します。
退職後にかかる5つの支出

退職後は会社員時代と異なり、社会保険料や税金を自分で支払う必要があります。
生活費(月15~20万円)
退職後の生活費は、家賃・食費・光熱費・通信費などで月15~20万円程度が目安です。
総務省の家計調査によると、単身世帯の平均支出は約16万円。
ただし、地域や生活スタイルによって大きく変動するため、現在の支出を3ヶ月分記録して把握することが重要です。
特に退職後は外食費が減る一方、在宅時間が増えて光熱費が上がる傾向にあります。
健康保険料(月2~5万円)
国民健康保険料は前年の所得に基づいて計算されます。
年収400万円の場合は月3~4万円程度。
退職直後は会社員時代の収入を基に算定されるため、高額になりがち。
任意継続被保険者制度を選択すれば、退職後2年間は会社の健康保険に加入できますが、保険料は全額自己負担です。
どちらが安いかは市区町村の窓口で試算してもらいましょう。
国民年金保険料(月約1.7万円)
国民年金保険料は収入に関係なく一律で、2025年度は月額17,510円です。
会社員時代は厚生年金として給与天引きされていましたが、退職後は自分で納付する必要があります。
失業中で支払いが困難な場合は、免除制度を利用しましょう。
申請すれば最大2年1ヶ月前までさかのぼって免除を受けられ、将来の年金額への影響も最小限に抑えられます。
住民税(年収により月1~3万円)
住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職後も1年間は支払いが続きます。
年収400万円の場合、月額2万円前後が目安です。
退職時期により徴収方法が異なり、1~5月退職なら一括徴収、6~12月退職なら普通徴収となります。
退職後に収入が大幅に減少した場合は、市区町村の窓口で減免申請ができる可能性があるので相談してみましょう。
所得税(還付あり)
退職した年は必ず確定申告が必要になり、払いすぎた所得税が還付される可能性があります。
年の途中で退職した場合、年末調整を受けていないため、生命保険料控除や医療費控除などが適用されていません。
退職金にも所得税がかかりますが、退職所得控除が適用されるため、勤続20年なら800万円まで非課税です。
確定申告により数万円から数十万円の還付を受けられるケースも多いです。
退職後の税金シュミレーション
退職後の税金負担を正確に把握するため、源泉徴収票を使った具体的な計算方法を解説します。
前年の源泉徴収票から計算する
源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から、住民税と国民健康保険料を概算できます。
住民税は課税所得の約10%、国民健康保険料は市区町村により異なります。
例えば年収400万円(都内独身者)なら、住民税が年17万円、国民健康保険料が年43~53万円程度。
市区町村のホームページにある計算ツールを使えば、より正確な金額を算出できます。
退職金にかかる税金を確認する
退職金は「退職所得」として分離課税され、他の所得とは合算せず、税制上優遇された仕組みが適用されます。
退職所得控除額は「勤続20年までは年40万円(最低80万円)」、21年目以降は「800万円+年70万円×(勤続年数-20年)」という計算式です。
控除後の金額の2分の1が課税対象となり、税率は5~45%です。
例えば勤続15年で退職金800万円の場合、控除額600万円を引いた200万円の半分である100万円が課税対象となり、実際の税額は約5万円程度になります。
自己都合退職でもらえるお金
自己都合退職でも受け取れる給付金や手当があり、適切に申請すれば経済的負担を軽減できます。
失業保険(基本手当)
自己都合退職でも雇用保険に1年以上加入していれば、失業保険を受給できます。
給付制限期間が1ヶ月あるため、実際の受給開始は約2ヶ月後だと思った方がいいです。
給付額は退職前6ヶ月の平均賃金の50~80%。
29歳以下の方で月収30万円なら月額約18万円です。
給付日数は被保険者期間により90~150日。
| 雇用保険の被保険者だった期間 | ||
|---|---|---|
| 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
| 90日 | 120日 | 150日 |
受給中も求職活動実績が必要となるため、月2回以上の応募や面接を行いましょう。
退職金
退職金制度がある会社なら、自己都合退職でも規定に応じた退職金を受け取れます。
一般的に自己都合退職の場合、会社都合退職の60~80%程度に減額されることが多いです。
勤続3年以上が支給条件となっている企業が多く、金額は勤続年数×基本給×支給率で計算されます。
中小企業退職金共済に加入している場合は、自己都合でも減額なく満額受け取れるケースもあるので、就業規則を確認しましょう。
未払い残業代
退職時に未払い残業代がある場合、過去2年分まで遡って請求できます。
タイムカードやメールの送信時刻、業務日報などが証拠となります。
会社が支払いを拒否する場合は、労働基準監督署への相談や内容証明郵便での請求が有効です。
平均して月30時間の未払い残業があれば、2年分で100万円以上になることもあります。
有給休暇の買取り
原則として有給休暇の買取りは禁止されています。
ただし、法的義務はないため会社の就業規則次第です。
買取り価格は通常の賃金相当額が一般的で、20日分の有給があれば月給の約1ヶ月分に相当します。
退職前に計画的に有給を消化することが基本ですが、引き継ぎ等で難しい場合は買取り交渉をしてみる価値があるでしょう。
退職給付金と失業手当の違い

退職給付金と失業手当は混同されやすいですが、制度や受給条件が全く異なります。
支給元と制度が違う
退職給付金は企業が独自に設ける制度で、退職金や企業年金などを指します。
一方、失業手当は国の雇用保険制度から支給される公的給付です。
退職給付金は就業規則で定められた勤続年数を満たせば受給でき、金額も企業により様々です。
失業手当は全国一律の基準で、ハローワークでの手続きが必要。
両者は併給可能なので、それぞれ適切に申請することが重要です。
受給条件が違う
退職給付金の受給条件は企業により異なり、一般的に勤続3年以上が条件となります。
懲戒解雇の場合は支給されないことが多いです。
失業手当の受給には、離職日以前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上必要です。
また、働く意思と能力があり、求職活動を行っていることが条件となります。
65歳以上の場合は高年齢求職者給付金という別制度になるため、注意が必要でしょう。
受給期間と金額の違い
退職給付金は退職時に一括または分割で支給され、金額は勤続年数と基本給により決まります。
大企業の平均は勤続20年で800万円程度です。
失業手当は最長330日間の期間限定給付で、金額は離職前の賃金の50~80%となります。
退職給付金は老後資金として貯蓄する人が多い一方、失業手当は求職期間中の生活費として使われます。
それぞれの特性を理解して、計画的に活用しましょう。
やってはいけない退職のタイミング

退職タイミングを誤ると、数十万円単位で損失が発生する可能性があるため注意が必要です。
ボーナス支給前の退職
ボーナス支給日の直前に退職すると、満額受け取れない可能性が高くなります。
多くの企業では「支給日に在籍していること」が支給条件となっているためです。
査定期間を満たしていても、支給日前に退職すれば受給資格を失います。
夏季賞与なら7月上旬、冬季賞与なら12月上旬まで待つことで、年収の2~3ヶ月分相当の収入を確保できます。
退職を決めたら、就業規則で賞与規定を必ず確認しましょう。
年末調整前の退職
11月末までに退職すると年末調整を受けられず、自分で確定申告する必要があります。
年末調整では生命保険料控除や扶養控除などが自動的に適用されますが、確定申告では全て自分で手続きします。
12月まで在籍すれば会社が年末調整を行い、過払い分の所得税が12月給与で還付されます。
確定申告の手間を省き、還付金を早く受け取るためにも、可能なら12月末まで在籍することをお勧めします。
社会保険料の締め日を考慮しない退職
月末退職と月末前日退職では、社会保険料の負担が1ヶ月分変わります。
月末退職の場合、その月(退職月)の社会保険料が給与から控除されます。
退職日が月末の場合、資格喪失日は翌月の1日扱いとなり、退職月分まで社会保険料がかかるのです。
月の途中(例えば月末の前日)に退職した場合は、その月の社会保険料は徴収されず、前月分までの負担で済みます。
ただし、厚生年金の加入期間が1ヶ月短くなるため、将来の年金額がわずかに減少します。
メリット・デメリットを比較して、最適な退職日を選びましょう。
退職前に必要な貯金額の計算方法

退職後の生活を安定させるため、具体的な貯金額の目安と計算方法を解説します。
最低3ヶ月分の生活費を確保する
失業保険の給付制限期間を考慮し、最低でも3ヶ月分の生活費60万円は確保しておきましょう。
内訳は生活費45万円、社会保険料9万円、予備費6万円です。
自己都合退職の場合、失業保険の受給開始まで約2ヶ月かかります。
この期間は無収入です。
貯金で生活することになります。
クレジットカードの引き落としや家賃の支払いが滞らないよう、現金として準備しておくことが大切です。
転職活動期間を6ヶ月と想定する
転職活動の平均期間は3~6ヶ月のため、6ヶ月分の生活費120万円を目標にしましょう。
応募から内定まで平均2~3ヶ月、その後の入社準備期間を含めると6ヶ月は見ておく必要があります。
また、転職活動には交通費や被服費などで月1~2万円の追加費用が発生します。
希望条件にこだわる場合は、さらに長期化する可能性もあるため、余裕を持った資金計画が重要となります。
緊急予備費を別途準備する
突発的な出費に備えて、生活費とは別に30万円程度の緊急予備費を準備しておきます。
パソコンの故障、冠婚葬祭、医療費などの想定外の支出に対応するためです。
特に退職後は収入が不安定になるため、急な出費で生活費を取り崩すリスクを避ける必要があります。
この予備費は普通預金など、すぐに引き出せる形で保管し、本当に緊急時のみ使用するよう心がけましょう。
退職後のお金がない場合の対処法4つ
退職後に経済的に困窮した場合でも、各種制度を活用すれば負担を大幅に軽減できます。
- 国民健康保険料の減額申請
- 国民年金の免除・猶予申請
- 住民税の減免申請
- 住居確保給付金の活用
国民健康保険料の減額申請
前年の所得が基準以下の場合、最大で7割の均等割軽減が自動的に適用されます。
一方、失業や廃業などで所得が大幅に減少した場合は、個別に減免申請ができます。
減免率や条件、必要書類は自治体ごとに異なりますので、早めに市区町村窓口で相談しましょう。
国民年金の免除・猶予申請
失業中は国民年金保険料の免除や納付猶予を申請でき、将来の年金受給権を守れます。
退職特例では本人所得を除外して審査されるため、承認されやすくなります。
全額免除の場合でも、国庫負担分により将来の年金額の2分の1は確保されます。
免除期間は10年以内なら追納可能で、老後の年金額を回復できます。
申請は市区町村役場かハローワークで行い、離職票があれば即日承認されます。
住民税の減免申請
失業により生活が困窮した場合、住民税の減免や分割納付を申請できます。
生活保護基準の1.2倍以下の収入なら減免対象となる市区町村もあります。
減免割合は25~100%。
失業の場合は50%減免が多いです。
申請には離職票と預金通帳のコピーが必要で、納期限前に手続きする必要があります。
分割納付できる自治体もあります。
具体的な基準・割合・分割額は必ず自治体ごとの公式案内や窓口で再確認してください。
住居確保給付金の活用
離職により住居を失う恐れがある場合、家賃相当額を最長9ヶ月(原則3ヶ月+条件により延長2回)受給できる制度です。
支給額は地域や世帯人数ごとに異なり、東京23区の単身世帯は月上限53,700円です。
主な要件は、離職後2年以内(特例あり)、世帯収入が基準以下、預貯金が単身世帯は50万円以下などです。
ハローワークでの求職活動が条件で、申請は居住地の自立相談支援機関で行います。
HSPが退職前に整えておきたい経済的・心理的余裕
HSPの特性を考慮し、ストレスを最小限に抑えながら退職準備を進める方法を解説します。
- 6ヶ月分の生活費を貯める
- 転職エージェントに事前登録する
- 退職後のスケジュールを明確にする
6ヶ月分の生活費を貯める
HSPの方は環境変化へのストレスが大きいため、通常より多めの6ヶ月分(120万円程度)を準備しましょう。
経済的余裕があれば、焦って条件の悪い仕事を選ぶリスクを避けられます。
また、面接で落ち着いて対応でき、自分に合った職場をじっくり選べます。
貯金があることで安心感が生まれ、精神的に安定するのです。
月5万円ずつ貯金すれば、2年で目標額に到達です。
転職エージェントに事前登録する
退職前に転職エージェント2~3社に登録し、市場価値や求人動向を把握しておきましょう。
HSPの方は情報収集に時間をかける傾向があるため、早めの準備が重要です。
エージェントとの面談で、自分の強みや適性を客観的に理解できます。
また、非公開求人の紹介や、面接対策のサポートも受けられます。
退職後に慌てて活動を始めるより、計画的に進めることで心理的負担を軽減できるでしょう。
退職後のスケジュールを明確にする
退職後3ヶ月間の詳細なスケジュールを作成し、不安を最小限に抑えましょう。
1ヶ月目は休養と各種手続き、2ヶ月目から本格的な就職活動、3ヶ月目に内定獲得という目安を設定します。
HSPの人は見通しが立たない状況でストレスを感じやすいため、明確な計画があれば安心できます。
手続きリストや必要書類も事前に準備し、退職日から逆算してタスクを整理しておくことで、スムーズな移行が可能です。
まとめ|退職でかかるお金を把握して計画的に準備しよう
退職後は生活費に加えて、健康保険料や住民税など月25~30万円程度の支出が発生します。
一方で、失業保険や退職金など、自己都合退職でも受け取れる給付金を活用すれば、経済的負担を軽減できます。
特にHSPの方は、6ヶ月分の生活費を準備し、転職エージェントへの事前登録など、心理的余裕を持てる環境を整えることが大切です。
退職タイミングや各種制度を理解し、計画的に準備を進めることで、安心して新しいキャリアをスタートできるでしょう。
