うつで全てを失った会社員が、人生をやり直せたリアル体験記◎

朝のアラームが鳴っても、体がまったく動かなかった。


「今日も行かなきゃ」「遅刻はできない」と頭ではわかっているのに、体が動かない。
涙が勝手にこぼれてきて、自分でもどうしていいかわからなかった。


もうすぐ30代、社会人としてキャリアも責任も感じる時期。
「怠け癖はダメだ」と自分に言い聞かせてきたけれど、その朝は何かが違った。


その日を境に、僕の人生は止まりました。
仕事も、自信も、人とのつながりも、すべて失ったような気がしました。
そして、心の中に残ったのは「もう終わりだ」という絶望だけでした。

第1章:気を遣いすぎる性格が、心を少しずつ削っていった

僕は昔から、人の顔色をうかがうタイプでした。
上司の機嫌、同僚の反応、家族の期待。
いつも誰かの気持ちを考えて、自分の気持ちは後回しにしていました。


仕事では「頼れる存在」でいようと必死でした。
上司に「お前ならできる」と言われると、断れなかった。
家に帰っても、家族の前では平気なふり。


「自分が我慢すればうまくいく」「頑張ればなんとかなる」
そう信じて、気づけば何年も、心に無理を重ねていました。


でも、少しずつ“何か”が壊れていくのを感じていました。
夜眠れなくなり、朝起きると涙が出る。


「このままでいいのか」

「本当にこれが自分の人生なのか」

そんな葛藤が毎日胸の奥で渦巻いていました。

第2章:崩壊 。 そして、すべてを失った日

ある朝、ついに体が動かなくなりました。
心が悲鳴を上げていたのに、無視し続けていた結果です。


医師の診断は「うつ病」。
「休職が必要です」と言われても、頭は真っ白。


「うつなんて、まさか自分がなるはずない」と思っていたのに、現実はあっけなく崩れました。


上司には深く理解されず、同僚は距離を置かれ、給料も減った。
家族にも心配をかけ、申し訳なさで何とか生きていました。


“真面目に頑張ってきたのに、なぜ自分だけがこんな目に?”
そう思うたび悔しく、無力さに涙が止まりませんでした。

何もかも失ったような感覚。
「もう立ち上がれない」と感じたのは、この時でした。

第3章:やり直しのきっかけは、“頑張るのをやめたこと”

最初の頃は「早く治さなきゃ」「社会に戻らなきゃ」と焦っていました。
でも、頑張ろうとすればするほど、心は重くなっていきました。


ある日、何もせず、一日中ベッドで過ごしました。
罪悪感でいっぱいだったけれど、その日だけは少しだけ心が軽くなったことに気づきました。


その時、初めて気づきました。
「頑張らない日」を過ごすことが、自分を救う第一歩だったということに。


焦らなくていい。
何もできなくてもいい。
その日をきっかけに、僕の“やり直し”は少しずつ始まりました。

気づいたときは、

まあいっか、と自分を認められたのかもしれません。

第4章:小さな一歩から始まった、人生のやり直し

① 朝、カーテンを開けることから始めた

最初の一歩は、ほんの小さなことでした。
朝、カーテンを開けて光を浴びる。
それだけで、少しだけ「生きてる」と感じられました。


太陽の光は、心にも小さなスイッチを入れてくれました。

② 散歩とノートを書く習慣

外に出るのが怖い日もありましたが、家の前を5分歩くだけでも違いました。
帰ってからノートに「今日の気分」「できたこと」を一行だけ書く。


たったそれだけで、心のモヤモヤが整理されていきました。
「今日も生きてる自分」を少しずつ実感できるようになったのです。

③ SNSをやめて、現実の人と話す

うつの時期、SNSを見ると「自分だけが取り残されている」ように感じました。
だから思い切って、SNSのアプリを1時間だけに決めた。


その代わり、近所のスーパーで「ありがとうございます」と言うようにしました。
小さな会話が、孤独な心を少しずつほぐしてくれました。

④ 「できたこと」を1日1つ書く

うつの時、人は「できなかったこと」ばかりに目がいきます。
でも、どんな日でも「できたこと」はある。

・朝起きられた
・ご飯を食べられた
・少し笑えた

そんな小さな“できたこと”をノートに書く。
それが、自己否定から自分を取り戻す小さな習慣になりました。

第5章:人とのつながりが、もう一度前を向かせてくれた

カウンセリングで、初めて本音を話しました。
「もう頑張れない」と口にした瞬間、涙が止まりませんでした。


カウンセラーは、ただ静かに頷いてくれました。
「それでも生きてきたんですね」と言われた時、張りつめていた心が崩れ落ちました。


その後、家族にも少しずつ本音を話しました。
思っていたよりも、みんな優しかった。


頼ることは恥ではない。むしろ、それが人としての強さだと感じました。


人とのつながりが、僕にもう一度「生きたい」と思わせてくれたのです。

第6章:うつが教えてくれた“生き直し”の意味

うつを経験して、僕は大切なことを学びました。


「前の自分に戻る必要はない」ということです。
あの頃の僕は、人の期待に応えることばかり考えていました。


でも今は、自分の心が穏やかでいられることを大切にしています。


うつはたしかに苦しかった。
でも、あの経験がなければ、「自分を大切にする」という感覚を知らずに生きていたと思います。


壊れたように見えた人生が、実は“作り直すための時間”だった。
そう思えるようになった今、心から「生きていてよかった」と感じています。

まとめ:うつは「終わり」ではなく、「始まり」だった

うつは人生の終わりではありません。
それは、新しい自分に出会う“始まり”です。


今日、あなたにできることはたったひとつ。
自分を責めないこと。


それだけで、心は少しずつ軽くなっていきます。
焦らず、ゆっくり、自分のペースで進めば大丈夫。


人生は、何度でもやり直せます。
そして、あなたにも、きっと“笑顔で生き直せる日”が来ます。

この記事を書いた人

ライター

学生時代から繊細な心と二人三脚。うつや不安障害と向き合う。製薬会社の開発部で約6年勤務後、独立。寛解の経験をもとにHSP、繊細さんへの発信に注力。