「傷病手当金をもらっているけど、生活が苦しい。少しでも副業で稼げないかな」。休職中は給料の約3分の2しか入らないため、こう考えるのは自然なことです。
でも、ここには大きな落とし穴があります。結論から言うと、傷病手当金の受給中は、原則として副業はできません。ただし、収入の種類によっては受け取っても問題ないものもあります。
この記事では、OKな収入とNGな収入の境界線を、わかりやすく解説します。
大前提:傷病手当金は「働けない人」のための制度
まず、なぜ副業が原則ダメなのかを理解しておきましょう。
キーワードは「労務不能」
傷病手当金の支給条件のひとつに、「労務不能であること」があります。労務不能とは、療養のために仕事につけない状態のことです。つまり傷病手当金は、「働けないから収入がない人」の生活を支える制度なのです。
ここで副業をして働いてしまうと、「働ける状態なのでは?」と見なされ、支給条件から外れる恐れがあります。
判断基準は「金額」ではなく「労働の実態」
よくある誤解が、「少額ならバレないし大丈夫だろう」というものです。しかし、判断のポイントは稼いだ金額の大小ではありません。「労働の実態があるかどうか」です。
たとえ報酬が1円でも、そのお金を得るために心身に負担のかかる作業をしたと判断されれば、労務不能の条件から外れる可能性があります。「少しだけだから」という自己判断は、とても危険です。
NGになりやすい収入
では、具体的にどんな収入が問題になりやすいのかを見ていきましょう。
アルバイト・パート
最もわかりやすいNGが、アルバイトやパートです。コンビニ勤務や接客など、明確に「労働して対価を得る」働き方は、労務不能と真っ向から矛盾します。
「単発・1日だけなら大丈夫」と考える人もいますが、これも誤りです。1日だけの労働実績が、その日以降の手当を否定する根拠になり得ます。
在宅のクラウドワーク
「家でできる軽い作業なら平気では」と思いがちですが、これも注意が必要です。クラウドソーシングでのライティング、データ入力、プログラミングなどは、すべて「労働」とみなされます。
体への負担が少ないかどうかは関係ありません。在宅であっても、労働の実態があれば支給停止の対象になり得ます。
継続的な転売・ハンドメイド販売
利益を目的に商品を仕入れて売る転売や、ハンドメイド作品を継続的に作って販売する行為も、「事業」とみなされるリスクが高い活動です。「趣味の延長」のつもりでも、継続性や営利性があると労働と判断されることがあります。
OKになりやすい収入
一方で、受け取っても問題になりにくい収入もあります。
株・投資信託などの不労所得
株や投資信託の売買益、配当金は、原則として受給に影響しません。これらは「不労所得」、つまり労働を伴わずに得られる収入だからです。労務不能の条件と矛盾しないため、傷病手当金と同時に受け取っても問題ないとされています。
ただし、トレードを「業」として行う専業トレーダー的な実態がある場合は、別の判断になる可能性があります。
不動産の家賃収入
すでに保有している不動産からの家賃収入も、不労所得にあたります。そのため、傷病手当金とあわせて受け取っても、原則問題ありません。
不用品の売却
メルカリなどで、自分が使っていた古着や家具などの不用品を売るのは、原則として問題ありません。これは「生活用動産の処分」であり、労働や事業にはあたらないためです。
ただし、前述のとおり、利益目的の転売になると話は変わります。
迷ったときの正しい行動
OKとNGの線引きは、実はあいまいな部分もあります。最後に、トラブルを避けるための行動を紹介します。
自己判断せず、健康保険組合に確認する
「これくらいなら大丈夫だろう」という自己判断が、最も危険です。ここで挙げた例はあくまで一般論で、最終的な判断は加入先の健康保険組合が行います。
何か収入を得る活動を考えているなら、事前に健康保険組合へ「この活動は受給に影響するか」を確認しましょう。できれば、メールなど記録に残る形で問い合わせておくと安心です。
主治医にも相談する
体調が回復してきて「何かやってみたい」と思ったときは、主治医にも相談しましょう。療養中の活動が回復にどう影響するか、医学的な視点からのアドバイスが得られます。
副業のことばかり考えて、肝心の療養がおろそかになっては本末転倒です。
「稼ぐ」より「支出を減らす」を先に考える
収入を増やすことばかりに目が向きがちですが、療養中は「支出を減らす」ほうが体に負担がかかりません。自立支援医療で通院費を1割にする、保険料や税金の減免を申請する、固定費を見直す。
こうした方法で月数万円の支出を減らせれば、リスクのある副業と同じ効果が得られます。
まとめ|「働けない」が前提だからこそ、慎重に
傷病手当金の受給中は、労務不能が前提のため、原則として副業・アルバイトはできません。判断基準は金額ではなく労働の実態で、在宅ワークや単発バイトも対象になり得ます。
一方、株・投資・不動産などの不労所得や、不用品の売却は、原則問題ないとされています。ただし境界線はあいまいなので、迷ったら自己判断せず、必ず健康保険組合に確認してください。
そして、無理に稼ぐより、支出を減らすほうが体にやさしく、確実です。療養中はまず回復を最優先に、お金は制度を使って守る、という考え方が安心につながります。
- 受給中は原則副業NG: 「労務不能」が前提のため、働くと支給条件から外れる恐れがある
- 判断基準は金額でなく労働の実態: 在宅ワークや単発バイトも対象になり得る
- 不労所得は原則OK: 株・投資・家賃収入や、不用品の売却は問題になりにくい
- 迷ったら自己判断しない: 健康保険組合に、記録が残る形で事前確認を
- 「稼ぐ」より「支出を減らす」: 減免制度の活用は体にやさしく、確実な効果がある
※本記事は2026年6月時点の一般的な解説です。労務不能の判断や副業可否は、加入する健康保険組合の運用によって異なります。具体的な判断は必ず加入先の健康保険組合・主治医・社会保険労務士にご確認ください。
※つらい気持ちが続くときは、一人で抱えず相談窓口に頼ることもできます。
