【2026年完全ガイド】うつで働けないときにもらえるお金の全て|傷病手当金から障害年金まで

うつで働けなくなっても、日本には生活を支える公的なお金の制度が複数あります。まず、先に要点だけまとめます。

在職中に働けないなら、まず傷病手当金(給料の約3分の2・最長1年6ヶ月)。通院費が重いなら、自立支援医療(医療費が3割→1割)。症状が重く長期化するなら、障害年金(2025年度は障害基礎年金2級で月額69,308円)。退職して求職するなら、失業保険(ただし「働ける状態」が条件)。住まいが危ういなら、住居確保給付金

そして、これらの多くは「自分で申請しないともらえない」制度です。知っているかどうかだけで、受け取れる金額に年間何十万円もの差が生まれます。この記事では、うつで働けないときに使えるお金を、金額・条件・申請方法・使う順番まで、2026年時点の情報で網羅的に解説します。

なぜ「制度を知ること」がうつからの回復に直結するのか

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具体的な制度の前に、大切な前提をお伝えします。うつの回復を妨げる大きな要因のひとつが、「お金の不安」です。収入が止まる恐怖のなかでは、心はなかなか休まりません。

「働けない自分」を責め、焦って復帰しようとして、かえって悪化させてしまう。これは、うつで働けなくなった多くの人が陥るパターンです。だからこそ、「働けなくても、当面のお金はなんとかなる」という見通しを持つことが、回復の土台になります。

お金の制度を知ることは、単なる情報収集ではありません。安心して療養に専念するための、回復の第一歩なのです。

うつで働けないときにもらえるお金【全体マップ】

まず、全体像を整理しましょう。うつで使えるお金の制度は、大きく4つのグループに分けられます。

  • グループ1:療養中の生活を支えるお金:傷病手当金、障害年金
  • グループ2:支出(医療費・保険料・税金)を減らす制度:自立支援医療、国民健康保険料の減免、国民年金の免除、住民税の減免、高額療養費制度
  • グループ3:再就職を目指す時期のお金:失業保険(基本手当)、教育訓練給付
  • グループ4:住まいと最後のセーフティネット:住居確保給付金、生活福祉資金貸付、生活保護

あなたが今どの段階にいるかで、使うべき制度は変わります。順番に、詳しく見ていきましょう。

グループ1:療養中の生活を支えるお金

まだ働けない、療養に専念したい時期に頼れる制度です。

傷病手当金|まず最初に検討すべき制度

会社員や公務員がうつで働けないとき、最初の柱になるのが傷病手当金です。健康保険から支給される手当で、業務外の病気やケガで働けず給与が受け取れないときに支給されます。うつ病や適応障害などの精神疾患も、しっかり対象です。

いくらもらえるか:1日あたりの金額は「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 3分の2」で計算します。ざっくり言えば、給料の約3分の2です。たとえば額面の月給が30万円程度なら、1日あたり約6,600円、ひと月でおよそ20万円が目安になります。

いつまでもらえるか:支給開始日から通算して最長1年6ヶ月です。現在は「実際に働けなかった日」を足し上げる通算方式なので、一度復職して再び休んでも、残った日数を使えます。

受給の4条件:業務外の病気やケガで療養していること。療養のため働けない(労務不能)こと。連続3日間の待期期間を経て、4日以上休んでいること。休業中の給与が支払われていないこと。

申請方法:申請書には本人・医師・会社の3つの記入欄があります。主治医に記入を依頼し、会社に証明してもらい、健康保険組合に提出します。

注意点:額面ベースの計算なので、受給中も社会保険料や住民税は引かれます。手取りは目安より少なくなる点を覚えておきましょう。なお、傷病手当金そのものは非課税です。

障害年金|症状が重く長期化する場合の柱

「年金」という名前ですが、現役世代でも受け取れます。うつ病などの精神疾患も対象です。

2種類ある:障害基礎年金は、国民年金加入者(自営業・無職・学生など)が対象。障害厚生年金は、会社員など厚生年金加入者が対象で、障害基礎年金に上乗せされます。どちらになるかは、初診日にどちらの年金に加入していたかで決まります。

いくらもらえるか(2025年度):障害基礎年金は、1級で月額86,635円、2級で月額69,308円。18歳到達年度末までの子がいれば、子の加算も付きます。障害厚生年金は、これまでの報酬や加入期間に応じて上乗せされます。さらに、所得が一定以下なら障害年金生活者支援給付金(2025年度は1級月額6,813円、2級月額5,450円)も受け取れます。

受給の3条件:初診日が年金加入期間内にあること。保険料の納付要件を満たすこと。障害認定日(原則初診日から1年6ヶ月後)に障害等級に該当すること。

申請方法:初診日を確認し、年金事務所または市区町村の窓口へ相談。医師の診断書と、自分で作る「病歴・就労状況等申立書」を準備して申請します。手続きが複雑なため、社会保険労務士に依頼する人もいます。

グループ2:支出を減らす制度

「もらう」だけでなく、「支払いを減らす」ことも同じくらい重要です。

自立支援医療|通院費が3割→1割に

うつで通院している人に、まず使ってほしい制度です。精神疾患での通院医療費の自己負担が、3割から1割に軽減されます。対象は外来診療、薬代、デイケア、訪問看護など。

さらに、所得に応じてひと月あたりの負担に上限が設けられます。たとえば住民税非課税世帯で本人の収入が年80万9千円以下なら、負担上限は月2,500円です。申請は市区町村の窓口で、医師の診断書が必要。注意点として、申請前の医療費はさかのぼって軽減されないため、早めの申請が得です。

高額療養費制度|医療費が高額になったとき

ひと月の医療費が自己負担限度額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。入院を伴う場合などに効果があります。事前に「限度額適用認定証」を用意しておくと、窓口での支払いを抑えられます。

国民健康保険料の減免

退職して国民健康保険に加入し、収入が減った場合、保険料の減免を申請できます。特に、会社都合の退職などでは、保険料が大きく軽減される仕組みがあります。市区町村の窓口で相談しましょう。

国民年金保険料の免除・猶予

失業中は、国民年金保険料の免除や納付猶予を申請できます。「退職(失業)特例」を使えば、前年の所得にかかわらず免除が認められやすくなります。全額免除でも、将来の年金額の2分の1は国庫負担で確保されます。免除期間は10年以内なら追納も可能です。

住民税の減免

住民税は前年の所得に課税されるため、退職後も支払いが続きます。失業で生活が困窮した場合、減免や分割納付を申請できる自治体があります。納期限前の相談が基本です。

グループ3:再就職を目指す時期のお金

回復して「働けそう」となってきたら、次の制度が支えになります。

失業保険(基本手当)|「働ける状態」が条件

失業保険は、働く意思と能力があり、求職活動をしている人が対象です。そのため、療養中の「まだ働けない」段階では受給できません。順番としては、まず傷病手当金で療養し、回復してから失業保険、という流れになります。

重要な注意点:受給期間の延長。病気やケガで30日以上働けなかった場合、失業保険の受給期間を最大3年間延長できます。「今は無理でも、回復したら使いたい」というときは、退職後早めにハローワークで延長手続きをしておきましょう。これを忘れると、本来もらえる失業保険を受け取れなくなることがあります。

教育訓練給付|スキルを身につけて再出発

一定の条件を満たす人が、指定された講座を受講した場合、費用の一部が支給される制度です。回復後、新しい分野へ再就職する準備として活用できます。

グループ4:住まいと最後のセーフティネット

生活が立ち行かないときの、最後の支えです。

住居確保給付金|家賃を支える

離職などで住まいを失う恐れがある場合、家賃相当額を一定期間支給する制度です。求職活動などが条件で、申請は居住地の自立相談支援機関で行います。

生活福祉資金貸付

低所得世帯などを対象に、生活の立て直しに必要な資金を低利または無利子で借りられる制度です。市区町村の社会福祉協議会が窓口です。

生活保護|正当な権利

それでも生活が立ち行かない場合は、生活保護があります。「最後の手段」と思われがちですが、憲法で保障された正当な権利です。ためらわず、お住まいの福祉事務所に相談してください。

【時系列】うつで働けなくなったら、いつ何を申請する?

制度が多くて混乱しやすいので、時系列で整理します。

働けなくなった直後(在職中)

まず主治医に「働けない」ことを診断書で示してもらい、会社に休職を相談。同時に、傷病手当金の申請準備を始めます。通院しているなら、自立支援医療も早めに申請しましょう。

休職中

傷病手当金を1ヶ月ごとに申請し、収入の空白を最小化。医療費がかさむなら高額療養費制度も確認します。

退職を選ぶ場合

退職日に出勤しないなど、傷病手当金の継続給付の条件を満たすように注意。退職後は、国民健康保険料・国民年金・住民税の減免を市区町村に相談。失業保険は、まだ働けないなら受給期間の延長手続きをしておきます。

症状が長期化する場合

初診日から1年6ヶ月が近づいたら、障害年金の申請を検討します。

回復してきたら

失業保険を受給しながら求職活動。必要なら教育訓練給付でスキルアップします。

よくある質問(FAQ)

読者からよく寄せられる疑問に答えます。

Q. 傷病手当金と障害年金は同時にもらえますか?

一定の場合には併給の調整がありますが、両方の対象になることはあります。ただし、同じ理由で両方を満額受け取れるわけではなく、調整される場合があります。詳しくは年金事務所や健康保険組合に確認してください。

Q. うつでも障害年金は本当にもらえますか?

はい、うつ病などの精神疾患も障害年金の対象です。ただし、初診日・保険料納付・障害状態という3つの条件を満たす必要があり、審査があります。「病名」ではなく「日常生活や労働への支障の程度」で判断されます。

Q. 傷病手当金をもらうと、転職先にバレますか?

受給の事実が転職先に自動的に伝わる仕組みはありません。在職中の申請は今の会社に知られますが、退職後の分は自分で申請できます。

Q. 自立支援医療は、どんな病気でも使えますか?

継続的な通院が必要な精神疾患が対象です。うつ病、適応障害、双極性障害、統合失調症などが含まれます。まず主治医に相談してみましょう。

Q. 申請が難しくて、体調的に動けません。どうすれば?

無理に一人で抱えないでください。家族や、市区町村の障害福祉窓口、自立相談支援機関、社会保険労務士などが手続きを手伝ってくれます。

Q. パートやアルバイトでも傷病手当金はもらえますか?

勤務先の健康保険(協会けんぽや組合健保)に加入していれば、対象になり得ます。国民健康保険には傷病手当金の制度が原則ないため、加入している保険の種類を確認しましょう。

申請するときに共通して知っておきたい3つのこと

最後に、どの制度にも共通するポイントをまとめます。

1. 「申請しないともらえない」が大原則

ここまで紹介した制度は、どれも自動ではもらえません。役所が「あなたは対象ですよ」と教えてくれることは、基本的にないのです。知って、自分で申請することが、受給への唯一の道です。

2. 診断書・証明書は早めに準備する

傷病手当金、自立支援医療、障害年金は、いずれも医師の書類が必要です。依頼から発行まで数週間かかることもあるため、「使いたい」と思ったらまず主治医に相談しましょう。

3. 迷ったら、まず窓口に相談する

制度は複雑で、個人の状況によって使えるものが変わります。市区町村の窓口、年金事務所、ハローワーク、健康保険組合。これらは相談するための場所です。「こんなこと聞いていいのかな」とためらわず、頼ってください。

まとめ|お金の見通しが、回復への第一歩になる

うつで働けなくなっても、あなたを支える制度はたくさんあります。在職中なら傷病手当金、通院費には自立支援医療、長期化するなら障害年金、求職期には失業保険、住まいには住居確保給付金。そのほとんどが「申請しないともらえない」制度です。

だからこそ、この記事で全体像を知ったことが、大きな一歩になります。一度にすべてを理解しなくて大丈夫です。まずは、今のあなたに当てはまる制度をひとつ、主治医や市区町村の窓口に相談することから始めてみてください。

お金の不安が少しでも軽くなれば、心は回復に向かいやすくなります。使える制度は、ためらわず使いましょう。それは、あなたが安心して回復するための、正当な権利です。

この記事のポイント
  • 制度は4グループある: 生活を支える/支出を減らす/再就職期/住まいと最後の支え
  • まず傷病手当金: 給料の約3分の2を最長1年6ヶ月。うつ・適応障害も対象
  • 支出を減らす制度も重要: 自立支援医療で通院費が1割に。保険料・税金の減免も活用
  • 段階で使う制度が変わる: 療養中は傷病手当金、長期化は障害年金、回復後は失業保険
  • 申請しないともらえない: 診断書は早めに準備し、迷ったら窓口に相談する

※本記事は2026年6月時点の情報にもとづく一般的な解説です。制度の金額・要件は改定される場合があり、自己負担上限や受給要件は世帯状況・自治体・加入する保険によって異なります。具体的な金額や手続きは、必ず市区町村の窓口・年金事務所・ハローワーク・加入先の健康保険組合などでご確認ください。
※この記事はお金や制度の解説を目的としたものです。気分の落ち込みがつらく、心の不調を感じている場合は、一人で抱えず、お住まいの地域の精神保健福祉センターや相談窓口に頼ることもできます。緊急を要する場合は、ためらわず専門機関にご相談ください。

この記事を書いた人

ライター

学生時代から繊細な心と二人三脚。うつや不安障害と向き合う。製薬会社の開発部で約6年勤務後、独立。寛解の経験をもとにHSP、繊細さんへの発信に注力。