傷病手当金の申請は、「3つの記入欄(本人・医師・会社)を埋めて、健康保険組合に提出する」のが基本の流れです。まず、先に要点をまとめます。
申請に必要なのは、傷病手当金支給申請書(本人記入欄・医師記入欄・事業主記入欄)。医師の記入欄は「対象期間が過ぎてから」でないと書いてもらえません。申請から入金までは2週間〜1ヶ月以上、初回はさらに時間がかかります。こまめに(1ヶ月ごとに)申請すると、収入の空白を最小化できます。そして、書類の不備が入金遅れの最大の原因なので、提出前の確認が重要です。
この記事では、傷病手当金の申請方法を、書類の書き方・必要書類・入金までの流れ・つまずきやすいポイントまで、ステップごとに徹底解説します。うつや適応障害での申請にも対応した内容です。
傷病手当金とは|申請の前に押さえる基礎

申請方法の前に、制度の基本を確認しましょう。
病気で働けないときの生活を支える制度
傷病手当金は、健康保険から支給される手当です。業務外の病気やケガで働けず、給与が受け取れないとき、本人と家族の生活を保障するために支給されます。うつ病や適応障害などの精神疾患も、しっかり対象です。
いくらもらえるか
1日あたりの金額は、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額の平均額を30で割り、その3分の2です。ざっくり言えば、給料の約3分の2。月給30万円程度なら、ひと月およそ20万円が目安になります。
いつまでもらえるか
支給開始日から通算して、最長1年6ヶ月です。現在は実際に働けなかった日を足し上げる通算方式のため、一度復職して再び休んでも残日数を使えます。
受給の4条件
- 業務外の病気やケガで療養していること
- 療養のため働けない(労務不能)こと
- 連続3日間の待期期間を経て、4日以上休んでいること
- 休業中の給与が支払われていないこと
この4つを満たしていれば、申請できます。
【全体像】傷病手当金の申請から入金までの流れ

まず、申請の全体像をつかみましょう。流れは、大きく次の6ステップです。
- ステップ1:待期期間(連続3日間)を完成させる
- ステップ2:申請書を入手する
- ステップ3:本人記入欄を書く
- ステップ4:医師に記入してもらう
- ステップ5:会社に記入してもらう
- ステップ6:健康保険組合に提出し、審査・入金を待つ
一つずつ、詳しく解説します。
ステップ1:待期期間(連続3日間)を完成させる
申請の前提となるのが「待期期間」です。
待期期間とは
傷病手当金は、連続して3日間仕事を休んだ後、4日目から支給対象になります。この最初の3日間を「待期期間」といい、ここには手当が支給されません。
待期の3日間のカウント方法
この3日間は、連続していることが条件です。有給休暇でも、土日祝などの公休でもカウントされます。たとえば、金・土・日と3日連続で休めば、待期が完成します。
ただし、飛び飛びで休んだ場合は待期が完成しないので注意が必要です。
ステップ2:申請書を入手する
待期の目処が立ったら、申請書を準備します。
申請書の入手先
傷病手当金支給申請書は、次のいずれかで入手できます。
- 加入している健康保険組合・協会けんぽのウェブサイトからダウンロード
- 会社の総務・人事部門から受け取る
- 協会けんぽの場合は、窓口や郵送でも入手可能
申請書は「4枚1組」が一般的
協会けんぽの申請書は、一般的に次の構成です。
- 1枚目・2枚目:被保険者(本人)が記入するページ
- 3枚目:事業主(会社)が記入するページ
- 4枚目:療養担当者(医師)が記入するページ
健康保険組合によって様式が異なる場合があるので、自分の加入先のものを使いましょう。
ステップ3:本人記入欄の書き方
まず、自分で記入する部分から解説します。
記入する主な項目
- 被保険者の氏名、生年月日、住所
- 被保険者証の記号・番号
- 振込先口座情報
- 申請期間(いつからいつまでの分を申請するか)
- 傷病名、発病・負傷の原因
- これまでの傷病手当金の受給状況
書き方のポイント
申請期間:待期の3日間を除いた、実際に働けなかった期間を書きます。
振込先口座:本人名義の口座を正確に記入します。間違えると入金が遅れます。
傷病名:医師の記入欄と食い違わないようにします。うつの場合は「うつ病」「適応障害」など、診断名に沿って記入します。
よくあるミス
記号・番号の書き間違い、口座情報の誤り、申請期間の誤りが、入金遅れの原因になります。記入後、もう一度見直しましょう。
ステップ4:医師に記入してもらう
次に、最も重要な医師の記入欄です。
医師記入欄(療養担当者記入欄)とは
この欄は、「申請期間中、療養のために働けない状態だった」ことを医師に証明してもらう部分です。傷病手当金の支給可否を左右する、最も重要な欄です。
「対象期間が過ぎてから」でないと書けない
ここが重要なポイントです。医師は、「実際に働けなかった期間」を証明します。そのため、申請する期間が過ぎてからでないと記入できません。
たとえば「1月分」を申請するなら、1月が終わってから医師に依頼します。「これから休む予定の分」を先に書いてもらうことはできません。
依頼の仕方
診察時に「傷病手当金の申請書に記入してほしい」と伝えます。申請書を持参し、対象期間を医師に伝えましょう。
文書料がかかる
医師の記入には、文書料(数百円〜数千円程度)がかかるのが一般的です。金額は医療機関によって異なります。
記入までの時間
その場で書いてもらえることもあれば、後日受け取りになることもあります。数日〜1、2週間かかる場合もあるため、早めに依頼しましょう。
ステップ5:会社に記入してもらう
医師の欄が済んだら、会社の記入欄です。
事業主記入欄とは
この欄では、会社が「対象期間に給与を支払っていないこと」「勤務状況」などを証明します。
依頼の仕方
本人記入欄と医師記入欄が済んだ申請書を、会社の総務・人事に渡します。会社が事業主記入欄を埋めてくれます。
給与が支払われていないことの確認
傷病手当金は「給与が支払われていない」ことが条件です。会社の証明で、この点が確認されます。もし休職中に一部給与が出ている場合は、その分が調整されることがあります。
会社とのやり取りが負担なとき
うつの状態では、会社とのやり取り自体が負担なこともあります。その場合、郵送でのやり取りや、産業医・人事の窓口を通す方法を相談してみましょう。
ステップ6:提出・審査・入金
3つの欄が揃ったら、いよいよ提出です。
提出先
加入している健康保険組合・協会けんぽに提出します。会社経由で提出する場合と、自分で郵送する場合があります。加入先の指示に従いましょう。
審査にかかる期間
書類が受理されてから、おおむね2週間程度で審査・入金されるのが一般的です。ただし初回は、支給条件を丁寧に審査するため、より時間がかかる傾向があります。
入金までの合計期間
申請書の準備、医師・会社の記入、提出、審査を合わせると、実際には1ヶ月以上かかることも珍しくありません。特に初回は「そういうもの」と考えておくと、精神的に楽です。
支給決定通知
審査が通ると、支給決定通知が届き、指定口座に振り込まれます。
【入金を早める】3つのコツ
「少しでも早く受け取りたい」という方へ、遅延を防ぐポイントです。
コツ1:書類の不備をなくす
入金が遅れる最大の原因は、書類の不備です。記入漏れ、押印忘れ、医師の証明期間と申請期間のズレ。提出前に、3つの欄がすべて正しく埋まっているか確認しましょう。
コツ2:締め日を確認する
健康保険組合によっては、「毎月◯日までに受理した分を◯日に支給」という締め日があります。締め日を確認しておくと、支給時期の見通しが立ちます。
コツ3:1ヶ月ごとにこまめに申請する
申請は、休職期間がすべて終わってからまとめて行う必要はありません。1ヶ月ごとに区切って申請すれば、その都度入金され、収入の空白を短くできます。長期療養になりそうなときほど、こまめな申請がおすすめです。
【退職後も継続したい場合】の申請方法
退職後も傷病手当金を受け取りたい場合の注意点です。
退職後の継続給付(資格喪失後の継続給付)
在職中から傷病手当金を受けていれば、条件を満たすことで退職後も継続して受け取れます。
継続の条件
- 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
- 退職日に、傷病手当金を受給中または受給できる状態であること
- 退職日に出勤していないこと
「退職日に出勤しない」が特に重要
退職日に少しでも出勤すると、継続給付の条件を満たせなくなります。挨拶や荷物の整理であっても「出勤」とみなされる場合があるため、退職日は休んでいる状態にしておくことが大切です。
退職後の申請方法
退職後の期間分については、会社の証明が不要になり、自分で健康保険組合に申請します。
よくある質問(FAQ)

Q. 傷病手当金の申請は、いつから始められますか?
待期期間(連続3日間)を完成させ、4日目以降の働けなかった期間が発生してから申請できます。医師の記入は対象期間が過ぎてからになるため、実務上は月ごとにまとめて申請することが多いです。
Q. 申請書はどこでもらえますか?
加入している健康保険組合・協会けんぽのウェブサイト、または会社の総務から入手できます。
Q. 医師の記入にお金はかかりますか?
はい、文書料がかかるのが一般的です。金額は医療機関により、数百円〜数千円程度が目安です。
Q. うつでも申請できますか?
はい、うつ病や適応障害などの精神疾患も対象です。医師が「労務不能」と認めれば、申請できます。
Q. 自分で申請することはできますか?
医師と会社の記入欄が埋まっていれば、自分で健康保険組合に提出できます。退職後の分は、会社の証明なしで自分で申請します。
Q. 申請が却下されることはありますか?
労務不能と認められない、条件を満たさないなどの場合、支給されないことがあります。不支給の理由に納得できない場合は、健康保険組合に問い合わせるか、不服申し立ての制度を確認しましょう。
Q. パートやアルバイトでも申請できますか?
勤務先の健康保険(協会けんぽや組合健保)に加入していれば対象になり得ます。国民健康保険には原則この制度がないため、加入している保険を確認しましょう。
Q. 申請してから、どのくらいで振り込まれますか?
書類受理後おおむね2週間程度ですが、初回や書類不備がある場合はさらにかかります。準備期間を含めると1ヶ月以上を見込んでおくと安心です。
申請するときの心構え

最後に、スムーズに申請するための心構えです。
体調が悪いときは無理をしない
申請手続きは、体調が悪いときほど負担に感じます。一度にすべてやろうとせず、できることから少しずつ進めましょう。
家族や会社の窓口を頼る
書類の準備や会社とのやり取りは、家族や会社の総務に手伝ってもらえることもあります。一人で抱え込まないでください。
分からないことは健康保険組合に聞く
申請方法で迷ったら、加入している健康保険組合に問い合わせるのが確実です。書き方や必要書類を、丁寧に教えてくれます。
まとめ|手順を知れば、傷病手当金の申請は難しくない

傷病手当金の申請は、本人・医師・会社の3つの記入欄を埋めて、健康保険組合に提出するのが基本の流れです。ポイントは、医師の記入は対象期間が過ぎてから依頼すること、書類の不備をなくすこと、そして1ヶ月ごとにこまめに申請することです。
入金までは初回で1ヶ月以上かかることもあるため、その間の生活費は手元に用意しておくと安心です。手続きは一見複雑ですが、手順を一つずつ踏めば、決して難しくありません。
体調が悪いときは無理をせず、家族や会社、健康保険組合の力を借りながら進めてください。お金の見通しが立つことが、安心して療養に専念するための第一歩になります。
- 3つの記入欄を埋めて提出: 本人・医師・会社の欄を埋め、健康保険組合に出すのが基本
- 医師の記入は対象期間後: 「これから休む分」は先に書けない。実務上は月ごとに申請
- 入金は2週間〜1ヶ月以上: 初回は特に時間がかかるので、生活費を手元に用意しておく
- 入金を早める3つのコツ: 書類の不備をなくす・締め日を確認・こまめに申請する
- 退職後も継続できる: 被保険者期間1年以上など条件あり。退職日は出勤しないこと
※本記事は2026年6月時点の情報にもとづく一般的な解説です。申請書の様式・締め日・提出方法は加入する健康保険組合によって異なります。具体的な手続きは、加入先の健康保険組合・協会けんぽや会社の窓口でご確認ください。
※心の不調がつらい場合は、一人で抱えず、精神保健福祉センターや相談窓口に頼ることもできます。
