傷病手当金は、条件を満たさないと「もらえない」ことがあります。まず、先に、もらえない主なケースをまとめます。
- ケース1:国民健康保険にしか加入していない(自営業・フリーランスなど)
- ケース2:連続3日間の待期期間が完成していない
- ケース3:働ける状態と判断された(労務不能でない)
- ケース4:休業中に給与が支払われている
- ケース5:退職後の継続給付の条件を満たしていない
- ケース6:支給期間(通算1年6ヶ月)を使い切った
- ケース7:申請期限(2年)を過ぎた
この記事では、傷病手当金がもらえない7つのケースを、理由と対処法とあわせて解説します。「自分は大丈夫か」を確認しながら読んでみてください。
なぜ「もらえないケース」を知っておくべきなのか

具体的なケースの前に、この記事の意味をお伝えします。傷病手当金は、うつや適応障害での休職を支える重要な制度です。しかし、「もらえると思っていたのに、対象外だった」という事態は、実際に起こります。
働けず収入がない状態で、当てにしていたお金が入らないのは、大きな痛手です。だからこそ、申請する前に「もらえないケース」を知り、当てはまらないか確認しておくことが大切です。そして、もし当てはまっても、対処法や代わりの制度があることが多いので、あわせて解説します。
【前提】傷病手当金がもらえる4つの条件

もらえないケースを理解するため、まず「もらえる条件」をおさらいします。傷病手当金は、次の4条件をすべて満たすと支給されます。
- 業務外の病気やケガで療養していること
- 療養のため働けない(労務不能)であること
- 連続3日間の待期期間を経て、4日以上休んでいること
- 休業中の給与が支払われていないこと
この条件のどれかを欠くと、「もらえないケース」になります。順番に見ていきましょう。
ケース1:国民健康保険にしか加入していない
最も見落とされやすいのが、このケースです。
なぜもらえないのか
傷病手当金は、健康保険(協会けんぽ・組合健保)の制度です。自営業者やフリーランスが加入する国民健康保険には、原則として傷病手当金の制度がありません。そのため、国民健康保険の加入者は、病気で働けなくても傷病手当金を受け取れないのが原則です。
対処法・代わりの制度
- 所得補償保険・就業不能保険:民間の保険で、働けないときの収入を備える方法があります。加入は健康なうちに
- 障害年金:症状が重く長期化する場合、障害年金の対象になることがあります
- その他の支援:自立支援医療、国民年金保険料の免除、住民税の減免など、支出を減らす制度は国保加入者も使えます
自営業・フリーランスの方は、「傷病手当金がない」前提で、日頃から備えておくことが重要です。
ケース2:連続3日間の待期期間が完成していない
意外と多いのが、待期期間のつまずきです。
なぜもらえないのか
傷病手当金は、連続して3日間休んだ後の、4日目から支給されます。この最初の連続3日間(待期期間)が完成していないと、支給が始まりません。重要なのは「連続」であることです。飛び飛びで3日休んでも、待期は完成しません。
具体例
たとえば、月曜に休み、火曜に出勤、水曜・木曜に休んだ場合。連続3日にならないため、待期が完成していません。一方、金・土・日と3日連続で休めば、待期は完成します。
対処法
まずは連続3日間、しっかり休むことが必要です。有給や公休を使ってでも、連続した休みを確保しましょう。うつの場合、無理に飛び飛びで出勤するより、主治医と相談して連続して休むほうが、療養の面でも適切なことが多いです。
ケース3:働ける状態と判断された(労務不能でない)
傷病手当金の核心にかかわるケースです。
なぜもらえないのか
傷病手当金は「労務不能(療養のため働けない)」であることが条件です。医師が「働ける状態だ」と判断した期間は、支給の対象になりません。
副業・アルバイトをしていた場合
労務不能のはずの期間に、副業やアルバイトで働いていた場合、「働けるのでは」と判断され、支給されないことがあります。金額の大小ではなく、労働の実態があるかどうかで判断されます。
対処法
療養中は、労務不能の状態に専念することが基本です。副業などで収入を得たい場合は、事前に健康保険組合に「この活動は受給に影響するか」を確認しましょう。自己判断は避けるのが安全です。
ケース4:休業中に給与が支払われている
給与との関係も、もらえない原因になります。
なぜもらえないのか
傷病手当金は「給与が支払われていない」ことが条件です。休職中に会社から給与が支払われている場合、傷病手当金は支給されないか、調整されます。
給与の一部が出ている場合
給与の一部が支払われている場合は、その額が傷病手当金より少なければ、差額が支給されることがあります。給与が傷病手当金より多ければ、支給されません。
有給休暇との関係
有給休暇を使った日は「給与が支払われている」扱いになるため、その日分の傷病手当金は支給されません。ただし、待期期間の3日間は有給でもカウントされるので、そこは別です。
対処法
有給を使い切ってから傷病手当金に切り替える、という順番を検討しましょう。どちらが有利かは状況によるため、会社や健康保険組合に相談するのが確実です。
ケース5:退職後の継続給付の条件を満たしていない
退職に関連した、見落としやすいケースです。
なぜもらえないのか
在職中から傷病手当金を受けていれば、退職後も継続できる場合があります。しかし、次の条件を満たさないと、退職後は受け取れません。
- 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
- 退職日に、傷病手当金を受給中または受給できる状態であること
- 退職日に出勤していないこと
特に注意すべき点
被保険者期間が1年未満:入社して1年経たないうちに退職すると、継続給付の対象外です。
退職日に出勤:退職日に少しでも出勤すると、継続給付を受けられなくなります。挨拶や片付けでも「出勤」とみなされることがあります。
対処法
退職日を決める前に、自分が継続給付の条件を満たすか確認しましょう。被保険者期間が1年に少し足りない場合は、退職日を調整することで条件を満たせることもあります。退職日は出勤せず、休んでいる状態にしておきましょう。
ケース6:支給期間(通算1年6ヶ月)を使い切った
長期療養の場合に直面するケースです。
なぜもらえないのか
傷病手当金がもらえるのは、支給開始日から通算して最長1年6ヶ月です。この期間を使い切ると、同じ病気では原則としてそれ以上支給されません。
通算方式について
現在は、実際に働けなかった日を足し上げる通算方式です。一度復職して再び休んでも残日数を使えますが、通算で1年6ヶ月に達すると終了します。
対処法
支給期間の終了が近づいたら、次の支えを検討します。
- 障害年金:症状が続く場合、障害年金の対象になることがあります。初診日から1年6ヶ月が、障害年金の申請を検討する目安のひとつです
- 失業保険:回復して働ける状態なら、失業保険への移行を検討します(受給期間の延長手続きに注意)
- 各種減免・支援制度:自立支援医療や保険料の減免で、支出を抑えます
傷病手当金の終了前に、次の制度への切り替えを準備しておくことが大切です。
ケース7:申請期限(2年)を過ぎた
うっかり見落としがちな、期限のケースです。
なぜもらえないのか
傷病手当金には申請期限があります。労務不能であった日ごとに、その翌日から2年で時効になります。この期限を過ぎると、その分は請求できなくなります。
対処法
「後でまとめて申請しよう」と放置せず、こまめに申請するのが安全です。過去の分を申請し忘れていた場合も、2年以内なら請求できる可能性があるため、早めに健康保険組合に相談しましょう。
【一覧】もらえないケースと対処法まとめ
7つのケースを、対処法とあわせて整理します。
- ケース1(国保のみ):民間保険や障害年金で備える
- ケース2(待期未完成):連続3日間しっかり休む
- ケース3(労務不能でない):療養に専念、副業は事前確認
- ケース4(給与が出ている):有給を使い切ってから切り替え
- ケース5(退職条件を満たさない):退職日を調整、退職日は出勤しない
- ケース6(期間を使い切った):障害年金など次の制度へ
- ケース7(申請期限切れ):こまめに申請、2年以内に請求
【ケース別】もらえなかったときに使える代替制度
「傷病手当金がもらえない」と分かっても、諦める必要はありません。状況に応じて、代わりに使える制度があります。
収入を支える制度
- 障害年金:症状が重く長期化した場合、障害基礎年金(2025年度は2級で月額69,308円)などの対象になることがあります。国民健康保険の加入者でも受けられます
- 失業保険:回復して働ける状態なら、求職活動を条件に受給できます。療養で長く働けなかった場合は、受給期間の延長手続きを忘れずに
- 生活保護:どうしても生活が立ち行かない場合の、最後のセーフティネットです
支出を減らす制度
- 自立支援医療:精神疾患の通院医療費が3割から1割に。国保加入者も使えます
- 国民健康保険料・国民年金の減免:収入が減った場合、申請で軽減できます
- 住民税の減免:失業などで困窮した場合、減免や分割納付が可能な自治体があります
住まいを守る制度
住居確保給付金:離職などで住まいを失う恐れがある場合、家賃相当額を一定期間支給。
これらを組み合わせれば、傷病手当金が使えなくても、生活を支えることは可能です。まずは市区町村の窓口で「使える制度を知りたい」と相談してみましょう。
【予防】もらえないケースを避けるためのチェックリスト
申請前に、次の点を確認しておくと、もらえないリスクを減らせます。
- 自分が加入しているのは健康保険か、国民健康保険か
- 連続3日間の待期期間を完成させているか
- 療養に専念し、労務不能の状態にあるか
- 休業中に給与が支払われていないか
- (退職する場合)被保険者期間は1年以上あるか
- (退職する場合)退職日に出勤しない予定か
- 支給期間(通算1年6ヶ月)はまだ残っているか
- 申請期限(2年)を過ぎていないか
これらをクリアしていれば、多くの場合、傷病手当金を受け取れます。不安な点があれば、申請前に健康保険組合に確認しておきましょう。
よくある質問(FAQ)

Q. 自営業ですが、本当に傷病手当金はもらえないのですか?
原則として、国民健康保険には傷病手当金の制度がありません。ただし、症状が重い場合は障害年金など別の制度が使える可能性があります。日頃から就業不能保険などで備えておくことも検討しましょう。
Q. うつで働けないのに「労務不能でない」と判断されることはありますか?
医師が労務不能と認めれば支給対象になります。ただし、療養中に働いていた実態があると、判断に影響することがあります。主治医とよく相談しましょう。
Q. 退職日に出社してしまいました。もう継続給付は受けられませんか?
退職日の出勤は継続給付の条件を満たさなくなる可能性が高いです。ただし、個別の状況によるため、まずは健康保険組合に確認してください。
Q. 傷病手当金を使い切った後は、どうすればいいですか?
障害年金の申請を検討する、回復していれば失業保険に移行するなど、次の制度への切り替えを考えましょう。
Q. 申請を忘れていた過去の分は、もう請求できませんか?
労務不能だった日の翌日から2年以内なら、請求できる可能性があります。早めに健康保険組合に相談しましょう。
Q. パートですが対象になりますか?
勤務先の健康保険に加入していれば対象になり得ます。国民健康保険の場合は原則対象外です。
Q. もらえないと分かったとき、他に使える制度はありますか?
自立支援医療、障害年金、保険料や住民税の減免、住居確保給付金など、状況に応じて使える制度があります。市区町村の窓口で相談してみましょう。
まとめ|条件を確認して、取りこぼしを防ぐ
傷病手当金がもらえないケースは、国保のみの加入、待期未完成、労務不能でない、給与が出ている、退職条件を満たさない、期間を使い切った、申請期限切れの7つです。これらは、事前に知っておけば、多くが防げたり、対処できたりします。
特に、退職を考えている人は「被保険者期間1年以上」「退職日に出勤しない」の2点に注意してください。そして、もし傷病手当金が使えなくても、障害年金や各種減免など、代わりに使える制度があります。
「もらえないかも」と不安なときは、一人で判断せず、健康保険組合や市区町村の窓口に相談しましょう。正しく条件を確認すれば、受け取れるはずのお金を取りこぼさずに済みます。
- もらえないのは7ケース: 国保のみ・待期未完成・労務不能でない・給与あり・退職条件・期間満了・期限切れ
- 国保加入者は原則対象外: 自営業・フリーランスは民間保険や障害年金で備える
- 退職時は2点に注意: 被保険者期間1年以上と、退職日に出勤しないこと
- 期限は2年・こまめに申請: 労務不能日の翌日から2年で時効になるので放置しない
- もらえなくても代替制度がある: 障害年金・自立支援医療・各種減免・住居確保給付金など
※本記事は2026年6月時点の情報にもとづく一般的な解説です。支給の可否は個人の状況や加入する健康保険によって異なります。具体的な判断は、加入先の健康保険組合・協会けんぽや市区町村の窓口でご確認ください。
※心の不調がつらい場合は、一人で抱えず、精神保健福祉センターや相談窓口に頼ることもできます。
